クラミジアとは
日本で最も多い性感染症で、クラミジア・トラコマチスという細菌によって起こる感染症です。既に感染している方との性行為(セックス・オーラルセックス)またはディープキスによって、女性の子宮頸管や男性の尿道、喉の粘膜などに感染するケースが多いです。
男性の 50 ~ 60%、女性の 70%~ 80%が無症状か軽い症状でしか発症しません。そのため、感染に気がつかずに放置してしまい、パートナーなどとの性行為によって感染を拡大させてしまう原因になる可能性があります。
また感染に気づかずにいると不妊症や流産、子宮外妊娠などの原因にもなることもあります。母親がクラミジアに感染していると新生児が産道から感染する場合もあるため、妊活を始める前や妊娠後に検査をされる方が多いです。
(厚生労働省, 女性の2007年から2017年における感染者数の推移)
上のグラフは2007年から2017年までの女性のクラミジア感染が医療機関で判明した数になります。男女ともにクラミジア感染者数は近年では横ばいです。しかし、日本の人口が減少していることを考えると、罹患率(感染している割合)としては上昇している可能性があります。また、無症状者におけるスクリーニング検査では、クラミジア感染症率が男性4-6%、女性3-5%、妊婦検診では、クラミジア陽性率5%という報告があります。無症状ということで、治療されず妊娠してしまったケースも多く見られるので、非常に注意が必要といえます。
(国立感染症研究所 感染症疫学センター 2018年の報告、(白井ら 2012年 若年者へのアプローチと 医療アクセスの課題)、(日本性教育協会 2012年 現代性教育研究ジャーナル No.16)
症状について
女性 | 男性 | |
主な症状 | 70-80%が無症状か症状が 軽度になります。 | 症状は、軽度で気付かないことも 多いです。 |
症状詳細 | ■おりもの 黄色みを帯びてくる< 少し量が増える ■外陰部 軽いかゆみ、腫れ ■排尿時 排尿時に軽い痛み ■セックスの時 軽い痛みがある | ■陰部 軽いかゆみがある 不快感がある 少量の分泌物がでる ■排尿時 |
放置リスク | 症状の悪化、卵管炎、腹膜炎、 子宮外妊娠、 不妊症の原因になる可能性 があります。 また粘膜の炎症によりHIVをはじめ、 | 症状の悪化、精巣上体炎、男性不妊症の 原因になる可能性があります。 また粘膜の炎症によりHIVをはじめ、 他の性感染症への感染リスクも高まります。 |
検査ができるまでの期間と検査方法について
女性 | 男性 | |
症状が出る までの期間 | 1〜3週間程度 | |
検査方法 (性器検査) | 排尿器官ではなく子宮へつながる器官に クラミジアが感染するため、子宮頸部の 分泌物や腟分泌物を採取して検査 (膣の検査)を行う ※自己採取もしくは医師による採取 どちらかを選択できることが多いです ※女性は生理中は検査ができません。 | 尿道に感染するため、尿検査を行う |
検査方法 (咽頭検査) | 咽頭から直接採取する方法と、 うがい液をもちいて採取する方法があります。 |
(日本性感染症学会性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016年)
検査の結果、クラミジア特有の核酸と呼ばれる遺伝物質が検出されれば、クラミジアと診断されます。しかし、陰性の場合でも、症状および内診を含めた診察所見で異常がある方は、血清抗体検査なども行って、治療する場合があります。また、同時に感染が起こることが多い淋菌感染症も一緒に検査することができるためセットで検査することが多いです。
治療方法
男性も女性も、クラミジアに効果のある抗生剤を1~7日間服用することで治療できますが、確実に服用出来なかったケースやパートナーの治療がうまく行かなかった場合も少なくなく、2~3週間後に治癒を確認する必要があります。
パートナーに感染させる、あるいはパートナー間で感染させ合うおそれがあるため、治療が終了するまでは性交を控え、パートナーも同時に検査、治療を受けることが重要になります。
また、治療中に飲酒すると治療効果が下がるほか、薬の内服中でも新たな性行為によって再感染する可能性があります。慢性の腹痛や卵管の閉塞など合併症のリスクは高くなるため、早めの検査、治療を行うことをおすすめします。
予防方法
コンドームの着用により感染リスクを抑えることができます。また、不特定多数との性行為は感染リスクが高くなりますので、避けた方が良いでしょう。
この記事の監修医師
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